朝の食卓で温かい汁物を飲む女性

会食が続いた週や、つい箸が止まらなかった日の翌日。おなかが張る、重い、ガスが多いと感じることがあります。食べすぎは胃の話として語られがちですが、その影響は大腸の菌のところまで届いています。ここでは、一度にたくさん食べたとき、腸と菌がそれをどう受け止めているのかを見ていきます。

目次

吸収しきれなかったぶんが、大腸へ届きます

食べたものの多くは、胃で細かくされ、小腸で分解されて吸収されます。小腸はかなりの量を吸収できる器官ですが、一度に届く量が多いと、すべてを吸収しきらないうちに先へ送り出すことがあります。

また、食べすぎるときは、急いで食べていたり、よく噛まずに飲み込んでいたりすることも少なくありません。噛む回数が少ないと、粒が大きいまま先へ進み、消化の手が届きにくくなります。

こうして、ふだんより多くの材料が、ふだんとは違う形で大腸に届くことになります。食べすぎの影響が翌日に出るのは、この届いた材料を大腸の菌が処理するのに時間がかかるためです。

食べすぎのあとに胃が重いと感じるのは、胃が食べたものを先へ送り出すのに時間がかかっているためです。けれども、胃を出たあとも、食べたものの旅は続きます。小腸を通り、大腸に届くまでには、さらに時間がかかります。翌日になって変化を感じるのは、ちょうどそのころに大腸での処理が進んでいるためです。

届いた量が多いと、菌の仕事も増えます

大腸に届いた材料は、そこに住む菌たちが分解していきます。食物繊維や吸収されなかった糖は、菌によって発酵され、短鎖脂肪酸やガスに変わります。

一方で、肉や魚、乳製品などを多くとった日は、吸収しきれなかったタンパク質も大腸に届きやすくなります。タンパク質が大腸に届くと、菌はそれを別の道筋で分解し、においのある成分などをつくります。脂の多い料理なら、消化のために出た胆汁も一緒に届きます。

つまり、食べすぎた翌日の大腸では、量が増えるだけでなく、届く材料の種類も偏りやすいということです。菌の側から見れば、急に大量の、しかもふだんと違う材料が運び込まれた状態です。

甘いものや、お酒と一緒の食事が多かった場合は、さらに事情が重なります。吸収しきれなかった糖が大腸に届くと、菌による発酵が一気に進むことがあります。お酒の翌日におなかがゆるくなるのも、水の回収と、届く材料の変化が重なった結果です。

張りやガスは、その結果です

食べすぎた翌日におなかが張る、ガスが多いと感じるのは、この処理の結果です。菌が材料を発酵させるときには、水素や二酸化炭素などのガスが出ます。材料が多ければ、出るガスも増えます。

ガスの多くは、ほかの菌に使われたり、体に吸収されたりして減っていきますが、受け手が追いつかないぶんは、張りやおならとして感じられます。においが強くなるのは、タンパク質の分解でできた成分が混ざるためです。

こうした変化は、多くの場合、菌が届いた材料をこなしていくにつれて落ち着いていきます。張りやガスは、腸の中で処理が進んでいるしるしでもあります。ただし、強い痛みが続く、便に血が混じる、熱があるといった場合は、食べすぎだけで片づけず、医療機関で相談してください。

ガスや張りの感じ方には個人差があります。同じものを同じ量食べても、ほとんど気にならない人もいれば、強く張る人もいます。おなかの中の菌の顔ぶれや、腸の動き方、ガスに対する感じやすさが、人によって違うためです。

ガスの量は、届いた材料の種類によっても変わります。豆やいも、玉ねぎなど、大腸で発酵されやすい材料が多い食事のあとは、ガスが増えやすいと感じる方もいます。これは菌がよく働いている証拠でもあり、材料そのものが悪いわけではありません。

1日で戻せる、とは考えないほうがよい

ここで一つ、気をつけたいことがあります。食べすぎた翌日に、一日なにも食べない、極端に量を減らす、といった方法で帳尻を合わせようとすることです。

腸内細菌の顔ぶれは、食べたものによって数日のうちに動くことが知られています。ただし、動いたものが戻るのにも、同じくらいかそれ以上の時間がかかります。戻り方には、ものによって違いがあるということです。一日で取り返そうとしても、菌の側の変化はそこまで早く動きません。

それに、まったく食べなければ、繊維を材料にしている菌にも何も届かなくなります。食べすぎの反動で食べなさすぎにすると、偏りがもう一つ増えることになりかねません。

食べすぎを責める必要もありません。人と食卓を囲むことや、季節の行事を楽しむことは、暮らしの大切な一部です。食べすぎた日があること自体は、特別なことではありません。大切なのは、そのあとどう戻ってくるかです。

翌日は「減らす」より「整えて待つ」

では、食べすぎた翌日はどう過ごせばよいでしょうか。考え方は、減らして取り返すことではなく、ふだんの形に戻して待つことです。

量は少し控えめにしながら、野菜やきのこ、海藻など、繊維のとれるものを一品足す。温かい汁物で、ゆっくり食べる。水分をこまめにとる。前の日に偏った材料の隣に、別の材料を置き直すイメージです。

年末年始のように、食べる機会が続く時期もあります。一回ごとに完璧を目指すより、続いたあとに、いつもの食卓へ戻ってくることを大切にしてみてください。腸の中の菌は、届く材料が整えば、それに合わせてまた動き始めます。

菌の側から見れば、偏った材料が続いたあとに、いつもの材料がまた届き始めることが、もとの暮らしに戻る合図になります。翌日の一食を、いつもの一食に戻す。それが、腸の中の菌にとっていちばんわかりやすい立て直しです。

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