友人と食卓を囲んで乾杯する女性

飲み会の翌朝、お腹の調子がいつもと違う。そんな経験のある方は少なくないと思います。お酒を飲んだ翌日にお腹がゆるくなるのは珍しいことではありませんが、なぜそうなるのかを説明できる方は多くありません。ここでは、腸がふだん水をどう扱っているかという話から始めて、アルコールと、一緒に飲んだり食べたりしたものが腸の中でどこへ行くのかを、順に見ていきます。腸内細菌の側から見たお酒の話にも触れます。

目次

お腹がゆるくなるのは、水が吸収しきれないときです

便の硬さを決めているのは、主に含まれている水の量です。腸には、飲んだ水に加えて、唾液や胃液、胆汁といった消化液もあわせて、1日に数リットル規模の水分が流れ込んでいます。

その大部分は小腸で吸収され、残りの多くも大腸で吸収されます。便として外に出るのは、流れ込んだ水のごく一部にすぎません。腸は、毎日これだけの量の水を回収し続けているのです。

この回収が追いつかないと、大腸に届く水が増え、便は水っぽくなります。お腹がゆるくなるという現象は、多くの場合、腸が水を吸収しきれなかったという結果として現れます。お酒の翌日に起きていることも、この回収の流れのどこかがいつもと違っているためと考えると、整理しやすくなります。

アルコールは、小腸の水の吸収と腸の動きに関わります

飲んだアルコールは、胃と小腸の上のほうで速やかに吸収されます。そのため、アルコールそのものが大腸まで届く量は多くありません。影響が出やすいのは、むしろ吸収の途中にある小腸です。

多めのアルコールが小腸を通ると、粘膜での水やナトリウムの吸収が妨げられることが報告されています。また、腸の動きが速くなり、中身が小腸を通り過ぎる時間が短くなるとも言われています。吸収しきれなかった水が大腸へ多く流れ込めば、大腸での回収も間に合わなくなります。

お酒の量が多い日ほど翌日のお腹に表れやすいのは、この流れの負担が量に応じて大きくなるためです。同じ量でも、空腹で一気に飲むと、アルコールが短い時間で小腸に届くため、影響が出やすくなると考えられます。

また、アルコールには尿の量を増やす働きがあります。飲んでいる間、体は水分を失いやすくなる一方で、腸の中には吸収しきれない水が残ります。体の水分が足りない状態と、お腹がゆるい状態が同時に起こりうるのが、お酒の翌日の特徴です。

一緒に飲んだもの、食べたものも大腸に届きます

お酒の席では、アルコール以外のものも多く口にします。ビールや甘いサワー、カクテルには糖が含まれ、つまみには揚げ物や味の濃い料理が並びがちです。これらのうち小腸で吸収しきれなかったものは、大腸へ運ばれます。

大腸に届いた糖は、腸内細菌の発酵の材料になり、ガスも生まれます。ガスが出る仕組みは別の記事で説明しています。また、吸収されにくい糖が大腸にたまると、濃さを薄めようとして水が引き込まれます。糖アルコールでお腹がゆるくなる仕組みと同じ考え方です。

脂っこい料理が多いと、脂肪の消化のために胆汁が多く出ます。胆汁の成分の一部は大腸まで届き、水分を腸の中に引き込む方向に働くことがあります。お酒の翌日のお腹は、アルコールだけでなく、その夜に腸へ届いたもの全体の結果なのです。

食べたものが口から大腸に届くまでには、数時間から半日ほどかかります。夜の席で口にしたものが大腸に届き、菌の発酵が進むのは、ちょうど寝ている間から翌朝にかけてです。お腹の変化が「翌日」に表れやすいのは、この時間差のためでもあります。

お酒は発酵でつくられますが、菌を届ける食品ではありません

ビールもワインも日本酒も、酵母がつくる発酵の産物です。そのため、発酵食品として腸によいのではないか、と考える方もいるかもしれません。

しかし、多くのお酒は、ろ過や加熱の工程を経て出荷されます。さらにアルコールそのものが、菌が増えにくい環境をつくります。お酒は、生きた菌を腸に届ける食品ではありません。発酵食品の菌が腸でどうふるまうかは、通り過ぎる菌の記事で扱っていますが、お酒はその話の外にあります。

一方で、飲酒の習慣が長く続いた人では、腸内細菌の顔ぶれが変わっていたという報告もあります。一晩のお酒で腸の菌が大きく入れ替わるわけではありませんが、量と頻度が積み重なると、腸の環境にも影響が及びうるということです。

なお、酒粕や甘酒のように、お酒づくりの周辺から生まれる食品もあります。これらは、酵母や麹が発酵の過程でつくった成分を含む食品で、お酒そのものとは分けて考えるものです。菌がつくったものを摂るという点では、バイオジェニックスの考え方とも重なります。

翌日のお腹は、飲み方で変わります

お酒の翌日にお腹がゆるくなりやすい方は、まず量と飲むペースを見直すことが基本です。そのうえで、飲み方の工夫がいくつかあります。

ひとつは、空腹で飲み始めないことです。先に何か食べておくと、胃から小腸へアルコールが移る速さがゆるやかになります。もうひとつは、お酒の合間に水を飲むことです。先に書いたように尿の量が増えるため、体の水分を保つうえでも役立ちます。

つまみには、揚げ物ばかりでなく、野菜や海藻、きのこ、豆腐のような料理を加えてみてください。食物繊維を含む料理は、腸内細菌にとっての材料にもなります。

翌日にお腹がゆるいときは、水分をこまめに摂り、消化のよいものを選んでください。汗や下痢で失われるのは水だけではないため、塩分を含む汁物なども役立ちます。お腹の調子が戻るまでは、繊維の多い食品を急に増やすより、いつもの量に戻していくほうが穏やかです。

お酒を控えても下痢が何日も続く、便に血が混じる、強い腹痛がある、といった場合は、飲み方の工夫で様子を見ずに医療機関にご相談ください。

お酒の翌日のお腹は、腸が水を回収しきれなかったという知らせです。量とペース、そして一緒に何を食べるか。その組み合わせで、翌朝の腸の負担は変わります。

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