新しいフードに変えたら、便がゆるくなった。おやつを変えた翌日に、お腹の調子を崩した。犬や猫と暮らしていると、こうした経験をすることがあります。フードの切り替えは少しずつ、とよく言われますが、なぜ少しずつなのかまで説明されることはあまりありません。ここでは、犬や猫の腸内細菌の側から、フードを変えたときにお腹の中で何が起きているのかを見ていきます。切り替えの進め方と、動物病院に相談したほうがよいときにも触れます。
急な切り替えで便がゆるくなるのは、よくあることです
フードを急に変えたあとに、便がやわらかくなる、においが変わる、おならが増える、といった変化が出るのは、珍しいことではありません。ときには、吐いてしまうこともあります。
新しいフードが体に合わない場合もありますが、多くの場合、原因はフードの良し悪しではなく、変わり方が急だったことにあります。どんなに質のよいフードでも、急に切り替えれば、お腹が追いつかないことがあるのです。
このことを理解するには、腸の中で消化を手伝っている菌の存在に目を向ける必要があります。
腸内細菌は、届く材料に合わせて顔ぶれを整えています
犬や猫の腸にも、人と同じように多くの菌が住んでいます。ペットの腸内環境の記事で書いたように、その顔ぶれは、ふだん食べているものに合わせてできあがっています。
ただし、犬と猫とでは前提が違います。猫はもともと肉食の性質が強く、犬は人に近い雑食の性質も持っています。同じ「フードの切り替え」でも、猫ではタンパク質や脂肪の変化の影響が出やすく、犬では穀物や食物繊維の違いが表れやすいなど、お腹の反応の出方は動物によって異なります。
フードが変わると、タンパク質や脂肪、食物繊維の種類や量が変わります。小腸で消化しきれなかった分は大腸へ届き、そこで菌の材料になります。ところが、腸の菌は前のフードに合わせた顔ぶれのままです。新しい材料をうまく使える菌は、はじめのうちは多くありません。
その結果、分解が追いつかない材料が残ったり、一部の菌だけが急に増えたりして、発酵が偏ります。水分の吸収が追いつかず、便がゆるくなるのはこのためです。菌の顔ぶれが新しい材料に合わせて入れ替わるには、時間がかかります。
少しずつ混ぜるのは、菌に準備の時間を渡すためです
フードの切り替えは、1〜2週間ほどかけて、前のフードに新しいフードを少しずつ混ぜていくのが基本です。たとえば、はじめの数日は新しいフードを4分の1ほどにして、便の様子を見ながら半分、4分の3と割合を増やしていく方法が、よく紹介されています。
少しずつ混ぜることで、新しい材料を使える菌が増える時間ができます。菌の側から見れば、急な引っ越しではなく、少しずつ荷物を運び込むような切り替え方です。途中で便がゆるくなったら、ひとつ前の割合に戻して、しばらく様子を見ます。
おやつやトッピングも同じです。人の食べものを少し分けたり、ヨーグルトや納豆をあげたりするときも、はじめは少量から試すのが安心です。
切り替えの時期にも気を配りましょう。引っ越しや旅行、家族が増えるときなど、ほかの変化が重なる時期は、それだけで腸の調子が変わりやすくなります。フードの切り替えは、落ち着いた時期を選んで始めるのがおすすめです。
猫は、食べ慣れたものへのこだわりが強いことがあります。新しいフードを食べてくれないからといって、食べない状態を何日も続けるのは避けてください。猫は食べない期間が続くこと自体が体の負担になるため、早めに相談することが大切です。
すぐに切り替えたほうがよいときもあります
少しずつ切り替えるのは基本ですが、例外もあります。獣医師から療法食を指示されたときや、与えているフードに回収の情報が出たときなどは、ゆっくり切り替えることにこだわる必要はありません。
こうした場合は、獣医師の指示や、メーカーの案内に従うことを優先してください。急な切り替えで便がゆるくなる可能性があることも含めて、あらかじめ相談しておくと安心です。
食物アレルギーが疑われて、原因を探るためにフードを変える場合も、獣医師と相談しながら進めるものです。自己判断で次々にフードを変えると、何が原因だったのかがかえって分かりにくくなります。
また、同じ銘柄のフードでも、原材料の配合が見直されることがあります。袋が新しくなったあとにお腹の調子が変わったときは、原材料の表示を前のものと見比べてみると、手がかりが見つかることがあります。
便は、切り替えがうまくいっているかの目印です
切り替えの間は、毎日の便をよく見ておきましょう。硬さ、色、におい、回数が、ふだんとどう違うかが目印になります。毎日の量や便の様子を簡単にメモしておくと、どの段階で変化が出たのかがあとから分かり、動物病院で相談するときにも役立ちます。便のにおいが変わる理由は、人の記事ですが考え方は共通しています。
多少やわらかくなっても、元気や食欲があり、数日のうちに落ち着いてくるなら、菌の顔ぶれが入れ替わっている途中と考えられます。
見落とされがちなのが、フードそのものの保存です。開封したドライフードは、湿気を吸うとカビが生えやすくなり、空気に触れて油が酸化することもあります。袋の口をしっかり閉じ、直射日光や高温多湿を避けて保存し、開封後はなるべく早めに使い切ってください。
下痢が続く、便に血が混じる、何度も吐く、元気や食欲がない、といった様子がある場合は、フードの切り替えのせいと決めつけずに、早めに動物病院を受診してください。子犬や子猫、高齢の犬や猫は、体の水分が失われやすいため、特に注意が必要です。
フードを変えることは、腸の菌にとっては住む場所の環境が変わることです。少しずつ、便を見ながら。そのひと手間で、新しいフードへの切り替えはぐっと穏やかになります。