犬の口元をのぞき込む女性

愛犬の口を開けてみると、奥歯のあたりが黄色や茶色に汚れていることがあります。食べかすが付いているように見えますが、多くの場合、それは口の中の菌が集まって固まったものです。ここでは、犬の歯石が何でできていて、どうやってできるのかを見ていきます。

目次

歯石は、菌の膜が固まったものです

犬の口の中にも、人と同じようにたくさんの菌が暮らしています。食事のあと、歯の表面には菌がとりつき、増えながらネバネバしたものを出して、うすい膜をつくります。これが歯垢です。

歯垢は、できたばかりのうちはやわらかく、こすれば落とせます。ところが、そのまま残っていると、唾液に含まれる成分を取り込んで少しずつ固まっていきます。固まった歯垢が、歯石です。黄色や茶色に見えるのは、その上にさらに汚れや色素が重なっていくためです。

つまり歯石は、食べかすがこびりついたものではなく、菌のかたまりが石のように固まったものです。表面はざらざらしていて、その上にまた新しい歯垢が付きやすくなります。

歯石がつきやすい場所は、奥歯の外側や犬歯のまわりなど、唾液がたまりやすく、舌でこすれにくいところです。口を少しめくって横から見ると、前から見ただけではわからない汚れが見つかることがあります。

歯垢は白っぽく、歯の色と見分けにくいことが多いものです。爪の先や綿棒で歯の表面を軽くこすってみて、白いぬるっとしたものが付けば、それが歯垢です。目に見えるほど黄色くなる前から、口の中では菌の膜づくりが進んでいます。

犬は人より歯石ができやすいと言われます

犬は、人に比べて歯石ができやすいと言われています。その理由の一つとして、唾液の性質の違いが挙げられます。犬の口の中は、歯垢が固まりやすい条件がそろいやすいと考えられています。

もう一つは、歯をみがく習慣の違いです。人は毎日歯みがきをしますが、犬は自分ではみがけません。食べるときも、あまり噛まずに飲み込むことが多い犬では、歯の表面がこすられる機会も少なくなります。

こうしたことが重なって、気づいたときには歯石がついていたということが起きやすくなります。毎日口の中を見ているわけではないので、飼い主が気づくのは、汚れがかなり目立つようになってからということも少なくありません。

小型犬は、口の大きさに比べて歯が詰まって生えていることが多く、歯と歯のあいだに歯垢がたまりやすいと言われます。犬の大きさや年齢、食べているものによっても、歯石のつき方は違います。同じ犬種でも、口の中の状態は一頭ずつ違うと考えておくのが確かです。

口の中の菌と、においの関係

犬の口のにおいが気になる、という声もよく聞かれます。このにおいも、多くは口の中の菌と関係しています。

歯垢や歯石の中、歯と歯ぐきのすき間には、酸素の少ない場所を好む菌が集まります。こうした菌が、食べものの残りや口の中のタンパク質を分解するときに、においのある成分をつくります。人の口のにおいと、しくみはよく似ています。

においは、口の中で菌がどれくらい働いているかを知る手がかりの一つです。ただし、においの強さだけで口の中の状態を決めることはできません。においが急に強くなった、いつもと違うと感じたら、それは口の中を見てみるきっかけにしてください。

口の中の菌は、口の中だけにとどまるわけではありません。食べものや唾液と一緒に飲み込まれ、胃や腸へも運ばれていきます。口の中の状態を整えることは、口のためだけでなく、その先に続く体の入口を整えることでもあります。

歯石は、家では取れません

ここで大切な例外があります。一度固まってしまった歯石は、家庭の歯みがきでは落とせません。歯ブラシでこすっても、表面の新しい歯垢が取れるだけで、石になった部分は残ります。

指や道具で無理にはがそうとすると、歯や歯ぐきを傷つけたり、犬が口を触られることを嫌がるようになったりすることがあります。また、麻酔をかけずに歯石を取るサービスについては、歯の表面だけがきれいに見えて、歯と歯ぐきのすき間に汚れが残る場合があるとして、注意が呼びかけられています。

家でできるのは、歯石になる前の歯垢を落としておくことです。すでについている歯石をどうするかは、動物病院で相談するのが安心です。

歯石を取る処置が必要かどうかは、歯や歯ぐきの状態、犬の年齢や体の具合を見て判断されます。麻酔をかけるかどうかも含めて、獣医師とよく相談して決めることになります。家での手入れと動物病院での処置は、役割が違うものと考えてください。

気になったら獣医師へ

犬の歯の健康は、口の中だけの話ではありません。食べることは、体づくりの入口です。おなかの中の菌に届く材料も、口から入ってきます。

毎日の歯みがきは、歯垢が固まる前に崩しておくための方法です。いきなり歯ブラシを使うのが難しければ、まずは口のまわりを触られることに慣れてもらうところから始めます。ガーゼを指に巻いて歯の表面をなでるだけでも、何もしないよりはずっと違います。

歯ぐきが赤い、出血する、口を気にしてしきりに触る、片側だけで噛んでいる。こうした様子があるときは、自己判断せず、獣医師に診てもらってください。歯石の状態や、取るかどうかの判断は、口の中をきちんと診てもらったうえで決めるのが確かです。

犬にとって、口の中を触られるのは本来あまりうれしいことではありません。短い時間から始めて、終わったらほめる、好きなおやつの時間につなげるなど、歯みがきの時間をいやな記憶にしない工夫が、長く続けるための近道になります。

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