同じものを、同じように続けたのに、片方には変化があって、もう片方には何も起きない。腸活の話をしていると、この場面によく出会います。研究の世界でも同じことが起きていて、効果が見られた群と見られなかった群を分けて扱うことがあります。前者をレスポンダー、後者をノンレスポンダーと呼びます。ここでは、この差がどこから生まれるのかを、菌の側から整理します。
同じものを摂っても、結果は一つになりません
ある食品や成分を試した研究では、参加者全員の平均値が示されることがよくあります。しかし平均の中身を開くと、はっきり変化した人と、まったく動かなかった人が混ざっていることが珍しくありません。平均だけを見ていると、この差は見えなくなります。
そこで、反応した群と反応しなかった群を分けて解析する考え方が出てきます。レスポンダーとノンレスポンダーという呼び分けは、そのために使われている言葉です。平均だけを見て「効いた」「効かない」と決めるより、なぜ分かれたのかを追うほうが、実際には役に立つからです。
ここで先にお伝えしておきたいことがあります。これは集団を見たときの傾向を表す言葉で、個人に貼るラベルではありません。ある研究のある指標で反応しなかったからといって、その人が何をしても変わらない体質だという意味にはなりません。
差を生んでいるのは、受け手の側です
摂ったものが同じであれば、違いは受け取る側にあります。腸内細菌の話でいえば、住んでいる菌の顔ぶれが人によって違う、ということです。
腸に届いた材料は、そのまま体に届いて働くわけではありません。菌がそれを分解し、別の物質に変えて、はじめて意味のある形になります。この一段が入ることが、腸内環境の話をややこしくしていると同時に、面白くしているところでもあります。口に入れたものと体が受け取るものが、そのまま同じではないからです。
ですから、その反応を担える菌がいるかどうかで、同じ材料からできるものの量が変わります。材料の側をいくら揃えても、加工する側がいなければ結果は出ません。
食物繊維から短鎖脂肪酸ができる過程は、その典型です。ひとつの菌が最初から最後までやっているのではなく、複数の菌が受け渡しをしながら進みます。途中を担う菌が薄い人では、材料が入っても最後まで届きません。
さらに、同じ繊維でも菌によって使える種類が違います。ある繊維を得意とする菌が少なければ、その繊維はほとんど手つかずで通過します。同じ量を摂っていても、使われているかどうかが人によって変わるということです。
外から入れた菌の場合も、事情は同じです
菌そのものを摂った場合はどうでしょうか。この場合も、入れた菌が定着して働くわけではありません。多くは数日で通り過ぎていきます。
それでも意味があるのは、通り過ぎるあいだに乳酸や酢酸などを置いていくからです。ただし、置いていったものを受け取って次に変える菌がいなければ、そこで止まります。同じヨーグルトを食べても、その先に進む人と進まない人が出るのは、このためです。
つまり、菌を摂っても繊維を摂っても、結局は同じところに行き着きます。入力が同じでも、その入力を処理する側の構成が違えば、出てくるものが変わるということです。
こう書くと身も蓋もないようですが、悪い話ばかりではありません。処理する側の構成は、渡すものによって少しずつ変わります。動かないのは、いま住んでいる菌の顔ぶれであって、その働き方までが固定されているわけではありません。
そもそも、反応したかどうかの判定が難しい
ここまで差の理由を説明してきましたが、実際にはもう一段手前に問題があります。反応したかどうかを、どうやって見分けるのかという問題です。
日常で使える指標は、たいてい体感です。おなかの調子、便の状態、肌や気分。どれも、その日の食事、睡眠、気温、ストレスで動きます。試している成分の影響だけを取り出すのは簡単ではありません。
期間も関係します。数日で判断すると、まだ変化が出ていない段階を「効かなかった」と読んでしまいます。逆に長く続けたあとでは、季節も生活も変わっているので、何が効いたのか分からなくなります。
研究であれば、便中の菌の構成や短鎖脂肪酸の量を測って判断します。日常ではそこまでできないので、体感に頼らざるをえません。ここに大きな隔たりがあります。
ですから、変化がなかったように見えたときに、それが本当に反応していないのか、判定できていないだけなのかは、はっきりしないことが多いのです。ノンレスポンダーという言葉は、この曖昧さを含んだまま使われています。
変えられるものと、変えられないもの
最後に、では何ができるのかを整理します。分けて考えると見通しが良くなります。
変えにくいのは、いま住んでいる菌の顔ぶれそのものです。生まれてからの食事や環境が積み重なって作られたもので、数週間の食生活で入れ替わるものではありません。ここを直接どうにかしようとすると空回りします。
一方で、変えられるものもあります。渡す材料の種類を変えること。ひとつに絞らず、幅を持たせること。そして、続け方を軽くして途切れないようにすること。反応しなかったように見えたとき、量を増やすより先に、種類と続け方を見直すほうが動きが出ることがあります。
それでも変化が分からないときは、記録を取っておくと後から見返せます。体感は記憶の中で上書きされていくので、あとになるほど判定が難しくなります。
結果が出る人と出ない人がいるのは、腸内細菌が一人ひとり違うからです。その違いは、うまくいかない理由であると同時に、試し方を変える余地があるということでもあります。